2018.05.23 水曜日
<2018年5月8日、産経新聞より抜粋>
兵庫県伊丹市は、「ビーコン」と呼ばれる小型の電波発信器を自転車に取り付け、盗難自転車を追跡する社会実験を始める。
市内に設置された約1000台の防犯カメラと併用することで、盗まれた自転車の位置情報を把握できる仕組みを2018年5月中にも整え、盗難抑止を目指す。
ビーコンは5秒に1度の間隔で電波を発信し、その電波を近くにある防犯カメラで受信することで、「いつ、どこを通過したのか」を把握できるという。
伊丹市は平成28年からビーコンの受信器を埋め込んだ防犯カメラを約1000台設置してきた。
これまでは、小学生や認知症などを抱える高齢者の位置情報を把握するために使用されてきたが、今回は盗難自転車にも応用する。
実験では、市職員の私用自転車50台にビーコンを設置。自転車が盗まれた場合、受信器で確認した電波をもとに盗難自転車の位置を捜し出す。
2017年の伊丹市内の自転車盗難は548件で、街頭犯罪認知件数の半数を占める。
伊丹市は「数年かけて実験し、どこまで犯罪抑止につながるのか検証したい。安全安心の街を実現する第一歩になれば」と話した。
上記の伊丹市の取り組みは、その取り組みの姿勢も技術も非常に高度なものだと感じています。
まず、社会実験に「数年かけて実施」「どこまで犯罪抑止になるのか検証」といったところにその精密さが感じられます。
犯罪の抑止効果というものは本来検証が困難なもので、ある特定の範囲内で、同じ犯行に絞り込んで、長期間、件数の数値計測をしない限り、その効果を正確に測ることは出来ません。そういった見地から、伊丹市が「1年」ではなく「数年」としている事は非常に厳密な姿勢だといえます。
また、防犯対策というものは「必ず効果が出る」という性質の物でもなく、特に今回は過去に例を見ない対策方法であることから、その効果の程を「まずはどこまで犯行抑止になるのか検証」としている所にもその正確性や厳密な考えが感じられます。
もし効果があれば、防犯カメラ+ビーコンの防犯対策をより広範囲に広げていくことで、より大きな件数の犯行抑止に役立てることができます。
また、技術的にも大変高度な対策といえます。
現在日本国内で街頭防犯カメラの設置台数は増えており、そのシステムもだんだん高度になってきています。
以前であれば「街頭防犯カメラは録画できていればよい」「街頭防犯カメラは存在そのものが犯行抑止になる」という考えで設置が進んでいましたが、最近では「時刻が狂わない様にGPS時計搭載」「再生しやすいようにWifiドングル搭載」という、正確性と操作性の向上したものが増えてきています。
その中でも伊丹市の街頭防犯カメラは、「ビーコンから発する電波を受信し、記録することができる」という機能を搭載している高機能なものになっており、伊丹市ではその機能を十二分に活用しようとしている意思が感じられます。
今回の自転車盗難で言えば、自転車の移動経路が判明するだけでなく、その自転車のビーコンの電波を受けた街頭防犯カメラが犯人の姿を撮影できる可能性も極めて高く、そこから逮捕につながる、というよりはそもそも「犯行の証拠をつかまれる」という心理的プレッシャーから高い犯行抑止効果が期待できます。
もともと自転車泥棒は「誰も見ていないから、ちょっと借りる」という気分で行われることが多く、その軽い気分が原因であるがゆえに防止対策が難しいものでした。
しかし、自転車泥棒が横行し、盗まれた自転車がどこかに乗り捨てされる、という事は、その数が多ければ多い程、治安の低下を招きかねません。
伊丹市が、現在市内で最も多い罪種をターゲットにしてその抑止に乗り出した、ということは治安維持上、極めて重要な意味を持つと感じています。
数年後にどのような結果になるかが非常に楽しみです。
もし良い結果が出れば、その結果は防犯カメラの新しい可能性を意味しますし、きっと良い結果が出るものと想像しています。
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